AIの言葉づかいを、会社らしくする──窓口の口調・文体・キャラクターの設計をAI会社が解説【2026年版】

二つのAI窓口が、同じ質問に答えたとします。ひとつは「営業時間は9時から18時です。」。もうひとつは「お問い合わせありがとうございます。当店は朝9時から夕方6時まで営業しております。ご来店を心よりお待ちしていますね」。──中身はどちらも正しい。でも、受け取る印象は、まるで違います。前者は素っ気なく、後者は少し温かい。どちらが良い悪いではなく、どちらが貴社らしいか。そしてそれは、貴社にしか決められません。

私たち株式会社Milestoneは、静岡県沼津市を拠点に、AIチャットボット・お問い合わせ対応AIの開発を専門に手がけている会社です。今日のテーマは、AIの言葉づかい。実は、導入の検討で最も見落とされやすく、導入の後で最も印象を左右する設計項目です。先に言い切ります。AIの口調を、初期設定のままにしないでください。それは、貴社の窓口に借り物の制服を着せて立たせるようなものです。長年磨いてきた貴社の接客の声を、AIにも反映させる。言葉づかいは飾りではなく、信頼の設計の一部なのです。しかも、中身の整備に比べて手間は小さく、印象への効きは大きい。費用対効果の高い一枚です。

なぜ言葉づかいが大切なのか。口調の温度、文体のルール、場面での切り替え、キャラクターの線引き。そして今日から始められる設計の3ステップまで。読み終える頃には、貴社のAIに着せるべき「制服」の仕立て図が、A4一枚の形で描けるようになっているはずです。

言葉づかいが、会社の印象を決める

まず、なぜこの地味な設計が効くのかです。

窓口のAIは、「会社の声」そのもの

いまや多くのお客様にとって、貴社との最初の接点は電話でも店頭でもなく、Webの窓口です。つまりAIの一言目は、貴社の第一声。人間の新人なら、電話の出方から言葉づかいまで研修するのに、AIは初期設定のまま──だとしたら、順番が逆です。一番多くのお客様と話す相手にこそ、一番丁寧に言葉を仕込むべきなのです。24時間、疲れ知らずで同じ声を保てるのは、仕込んだ声が良ければ強みに、悪ければ弱みになります。

初期設定のままの声は、どこか「よそ行き」

手を入れていないAIの文章には、共通の匂いがあります。丁寧だけれど、どこかよそよそしい。間違ってはいないけれど、どの会社でも同じ声。読んだお客様は、意識はしなくても、感じ取ります。「この会社の言葉じゃないな」と。制服で言えば、サイズの合わない借り物。着られてはいるが、様になっていない状態です。お客様は言語化しなくても、その「様になっていなさ」を感じ取ります。

実店舗との「声の落差」は、もったいない

特にもったいないのが、この落差です。お店では気さくで温かい接客なのに、Webの窓口は事務的で冷たい。あるいはその逆で、店は落ち着いた老舗なのに、窓口だけ妙に軽い。お客様から見れば、同じ会社の中に二つの人格がいるようなもの。せっかく築いた接客の評判が、窓口で目減りするのは、あまりにもったいない話です。

だから、言葉づかいは設計項目

結論はこうです。何を答えるか(中身)と同じ重みで、どう答えるか(声)を設計する。幸い、いまのAIは口調の指定がとてもよく効きます。決めれば、忠実に写せる。あとは、貴社が決めるだけです。

設計①:口調の「温度」を決める

最初に決めるのは、声の温度です。

物差しは3つ──丁寧度・距離感・元気度

口調は感覚で語ると迷走します。物差しを3本に絞りましょう。どれくらい丁寧か(かしこまり〜フランク)。どれくらい近いか(きっちり敬語〜親しみ混じり)。どれくらい元気か(落ち着き〜明るさ)。この3本の目盛りを決めるだけで、AIへの指示は具体的になります。「もっといい感じに」ではなく、「丁寧度は標準、距離は少し近く、元気は控えめ」。言葉にできれば、写せます。

温度感例文(営業時間の案内)向いている商売の例
きっちり型営業時間は9時から18時までとなっております。士業・医療・法人向け
標準あたたか型営業時間は朝9時から夕方6時までです。お気軽にお越しください。小売・サービス全般
フレンドリー型朝9時〜夕方6時までやっています。お待ちしていますね。美容・飲食・若い客層

丁寧すぎる罠──慇懃無礼と、冷たさ

意外な落とし穴が、丁寧すぎです。「〜でございます」「〜させていただいております」が連なる文章は、堅苦しく、長く、そして不思議と冷たい。丁寧な重ね着は、距離を生みます。敬意は、言葉の飾りの数ではなく、答えの的確さと気遣いの一言で伝わるものです。「お急ぎでしたら、お電話が早いです」の一文のほうが、十個の敬語より丁寧なのです。

砕けすぎる罠──軽さは、信頼を削る

逆の落とし穴が、砕けすぎ。友だち口調のAIは、初対面のお客様には軽く映り、年配のお客様には失礼に響き、金額や契約の話では頼りなく感じられます。そして何より、お怒りのお客様に軽い口調で返した瞬間、火に油を注ぎます。親しみは大切ですが、窓口はあくまで会社の顔。崩すなら、崩し幅を会社が決めて崩すのです。個人の裁量ではなく、設計として。

基準は、「貴社で一番感じの良いあの人」

では、どこに目盛りを合わせるか。おすすめの基準は明快です。貴社で一番接客の感じが良い、あの人。電話を替わると空気が和らぐ、お客様から名指しされる、あの人。あの人がこの質問にメールで答えるなら、どう書くか。その文章を思い浮かべて、そこに合わせる。理想の外注先を探すのではなく、社内の一番良い声を、AIに写すのです。お手本が社内にあるなら、答え合わせも社内でできます。

設計②:文体のルールを決める

温度の次は、見た目と型です。

一文の長さ・改行・記号──スマホの画面で考える

窓口の文章は、ほとんどがスマホで読まれます。だから、一文は短く。段落はこまめに。長い説明は箇条書きに。この読みやすさの設計は、口調以前の土台です。画面の中の圧迫感は、それだけで「感じの悪さ」になります。良いことが書いてあっても、読まれなければ無いのと同じです。

言い回しの統一──ゆらぎは、雑に見える

「です・ます」で通すのか。お客様を「お客様」と呼ぶのか「〇〇様」なのか、「皆さま」はどの場面で使うのか。お願いするときのクッション言葉は「恐れ入りますが」か「お手数ですが」か。一つひとつは些細でも、ゆらぐと文章は雑に見えます。よく使う型を数個、決めておく。それだけで、声は揃います。揃った言葉は、それだけで「行き届いた会社」の印象を作ります。

NGワード帳──使わない言葉も、決める

そして、使う言葉と同じくらい大切なのが、使わない言葉です。社内で避けている言い回し、客層に合わない流行り言葉、誤解を招きやすい表現。人間の新人に教えるのと同じ「言ってはいけない集」を、AIにも渡す。この一枚があるだけで、ヒヤリとする表現の事故は目に見えて減ります。言ってほしいことより、言ってほしくないことのほうが、実は明確に決めやすいものです。

この整備は、人間のメールにも効く

気づいた方もいるはずです。ここで作る文体のルールは、AIのためだけのものではありません。社員のメール型、案内文の書き方。会社の文章全体の教科書として、そのまま使えます。AIの導入をきっかけに、会社の言葉が揃う。よくある、うれしい副産物です。

設計③:場面で、声を変える

一本調子は、事故のもとです。

通常の案内は、標準の温度で

普段の質問への答えは、設計①で決めた貴社の標準温度で。営業時間も、料金も、道案内も、同じ声で。ここは迷いません。

謝罪とお怒りの場面は、温度を上げ、飾りを消す

問題は、お詫びの場面です。不具合の報告、お怒りの入力への応答。ここでは、標準がフレンドリー型の会社でも、絵文字と明るさを消し、丁寧の目盛りを一段上げ、まず受け止めの一言から入る。軽やかな声のままの謝罪は、誠意が届かないどころか、逆撫でになります。場面を読んで声を切り替える設計は、いまのAIなら十分に可能です。むしろ、切り替えの設計をしていない窓口が、まだ多いのです。ここまで作り込んでいるかどうかが、窓口の品質の分かれ目になりつつあります。

緊急・重要なお知らせは、簡潔第一

臨時休業、システムの不具合、重要な変更のお知らせ。この種の情報は、温かさより速さと明瞭さです。飾りを削ぎ、事実と対応を短く。声の使い分けの三点目として、決めておいてください。

設計④:キャラクターを、与えるか

最後の論点が、キャラ付けです。

愛称は、あり

AIに名前をつけること自体は、良い選択肢です。お客様に親しみが生まれ、社内でも「◯◯に聞いておいて」と呼びやすくなる。愛称は、無機質な道具を、社内の仲間に変えてくれます。以前の記事でお伝えしたとおり、線引きは一つだけ。AIであることが分かる形で、です。愛称は歓迎、人間への偽装は禁止。この線は今日も変わりません。

やりすぎ注意──キャラが、用件の邪魔をしない

注意したいのは、キャラの濃さです。語尾に決まり文句がつく、独特の言い回しを多用する。楽しい反面、肝心の答えが頭に入りにくくなり、真剣な相談やお詫びの場面ではキャラそのものが邪魔になります。キャラクターは隠し味まで。主役は、いつも答えの中身です。名脇役は、主役を食いません。

方言を「話させる」のは、慎重に

地元の会社として悩ましいのが、方言です。私たちの結論を言えば、聞き取りは広く、話すのは標準語ベースが基本です。以前の実験記事のとおり、お客様の「〜だら?」を理解する力は大切です。一方で、AIに方言を話させると、わざとらしさが出やすく、県外のお客様には壁になる。地元らしさは、方言の語尾ではなく、地名への土地勘や、天気と季節への自然な一言で出すのが上品です。「本日は沼津も暑いですね」の一文は、標準語のままで、十分に地元の声です。

実践──言葉づかい設計の、3ステップ

では、作り方です。第一に、現物を集める。貴社で一番感じの良い人のメールや、評判の良かった応対の記録を5つほど。口癖、言い回し、断り方の柔らかさ、締めの一文。お手本は、外に探しに行かなくても、社内に必ずあります。第二に、一枚のトーンガイドにまとめる。温度の目盛り、よく使う型文、呼び方の統一、NGワード帳、場面別の切り替え。項目は5つで十分、A4一枚に収めます。立派な冊子より、全員が今日読める一枚です。第三に、AIに写して、意地悪テスト。普通の質問だけでなく、お怒り風の入力や急ぎの相談を打ち込んで、声がきちんと切り替わるかを確かめる。──ここまでで、借り物の制服は、貴社の制服になります。あとは運用の中で、違和感のあった言い回しを月々の手入れで直していく。声も、育てるものです。答えの中身の手入れと同じ30分の中で、一緒に見ていけば十分です。

やってはいけない、3つのこと

してはいけない①:初期設定のまま、公開する

一番多い失敗が、これです。中身の整備に力を使い果たし、声はそのまま。おいしい料理を、無地の紙皿で出すようなものです。中身に自信があるほど、器のひと手間を惜しまないでください。公開前の半日で、印象は別物になります。

してはいけない②:流行り言葉で、若づくりする

若い客層に寄せようと、流行りの言い回しを入れる。気持ちは分かりますが、流行り言葉は半年で古び、古びた瞬間に痛々しくなります。若さは言葉の流行ではなく、テンポの良さと簡潔さで出すのが安全です。

してはいけない③:声だけ磨いて、中身が薄い

そして本末転倒がこれ。どれだけ感じの良い声でも、答えが的外れなら意味がありません。言葉づかいは、正しい中身を届けるための器です。器の設計は、中身の整備とセットで。順番を忘れないでください。

「AIを制御する技術」×言葉づかい──Milestoneの設計

私たちが「AIを使う」のではなく「AIを制御する」と言うとき、その制御には、答える範囲と正確さだけでなく、話し方の制御も含まれています。貴社の標準の声、場面での切り替え、使わない言葉、そして地元らしさの出し方。導入のヒアリングで私たちが必ず伺うのは、「貴社の接客で、大切にしている言葉はありますか」という問いです。長年の商売が磨いてきた声を、新しい窓口に正しく引き継ぐ。沼津の会社として、静岡の商売の温度感を分かったうえで、その仕立てをお手伝いします。

よくある質問(FAQ)

Q1.結局、どんな口調が正解ですか? A.正解は一つではなく、「貴社の実店舗・電話の声と揃っていて、客層に合っていること」が正解です。迷ったら、標準あたたか型から始めて、貴社の一番感じの良い人の文章に寄せて微調整してください。窓口だけ浮いていないか、が判定基準です。

Q2.絵文字は、使っていいのですか? A.一律の禁止も推奨もせず、客層と場面次第です。美容・飲食など親しみ重視の商売なら、控えめな絵文字は温かさに働きます。ただし、多用は軽さに変わり、謝罪・重要案内では必ず消す。「使う場面と使わない場面」をセットで決めるのが、絵文字の正しい導入です。

Q3.運用の途中で口調を変えると、おかしいですか? A.まったく問題ありません。むしろ、運用しながら声を整えていくのが普通で、健全です。大きく変えるときだけ、「窓口の案内の言い回しを見直しました」と一言添えれば十分。声の改善は、サービスの改善の一部です。

Q4.店舗やブランドごとに、口調を変えられますか? A.はい、できます。落ち着いた本店と、若い客層の新業態で声を分ける、といった設計は実際にあります。大切なのは、同じ窓口の中でぶれないこと。分けるなら窓口ごとに、それぞれの中では一貫させる。この原則だけ守ってください。

Q5.方言で話させて、地元らしさを出したいのですが。 A.気持ちはとても分かります。ただ本文のとおり、話す方言はわざとらしさと分かりにくさの危険があり、私たちは基本をお勧めしていません。地元らしさは、地名や道案内の土地勘、季節の話題への自然な反応で出すほうが、上品に伝わります。聞き取る力は、しっかり持たせましょう。

Q6.クレームのとき、AIの言葉づかいが火に油を注がないか心配です。 A.ごもっともな心配で、まさにそのための場面別設計です。怒りの言葉を受け取ったら、明るさと飾りを消し、傾聴と謝意の型に切り替え、早めに人へつなぐ。この切り替えを導入時にテストしておけば、言葉づかいはむしろ、初期対応の失点を防ぐ側に働きます。

Q7.社員のメールの文体と、合わせるべきですか? A.合わせられると理想です。AIの窓口、人間のメール、店頭の言葉。声が揃っている会社は、それだけで「ちゃんとしている」印象を与えます。本文のトーンガイドを、そのまま社内の文章の型として共有するのが近道です。

Q8.言葉づかいの設計だけでも、相談できますか? A.もちろんです。いまの窓口の応対文をいくつか拝見して、温度の診断と改善案をお出しする小さなご相談も歓迎です。貴社の「一番感じの良い人の文章」を数通お持ちいただければ、その場でトーンガイドの骨子まで作れます。

貴社の声で話す窓口を──株式会社Milestone

同じ正しい答えでも、声ひとつで会社の印象は変わります。温度を決め、型を揃え、場面で切り替え、キャラは隠し味に。基準はいつも、貴社で一番感じの良いあの人の、あの文章。初期設定の借り物の制服を、貴社仕立ての一着に。言葉づかいの設計は、半日の小さな手間で、窓口の信頼と居心地を大きく変えてくれます。

私たちMilestoneは、静岡県沼津市を拠点に、AIチャットボット・お問い合わせ対応AIの開発と導入支援を専門に行っています。「AIを使う」のではなく「AIを制御する」を核に、答えの正確さから話し方の温度まで、貴社らしい窓口づくりに伴走します。

こんなご相談を歓迎しております

  • いまの窓口の応対文を診断してほしい(温度チェック)
  • 自社のトーンガイドを一枚にまとめたい
  • クレーム時の声の切り替えを設計・テストしたい
  • 店舗・ブランドごとの声の使い分けを相談したい
  • 社員のメール文体まで含めて、会社の声を揃えたい

訪問対応(静岡県内・隣接エリア)、オンライン対応(全国)、どちらでも可能です。30分ほどお話を伺うだけで、貴社の窓口の「声の現在地と直しどころ」は、たいてい見えてきます。

▶ ご相談・お問い合わせ https://milestone-net.com

「資料だけ見たい」「他社と比較検討中」というライトな段階のご連絡も、歓迎しております。

「やりたいをできるに、できるをできたに」。中小企業の長期パートナーとして、責任を持って伴走します。


株式会社Milestone(マイルストーン) 代表取締役 大石 湧斗(おおいし ゆうと) 所在地:静岡県沼津市

中小企業向けAIシステム開発・導入支援。「AIを使う」のではなく「AIを制御する」を経営の核に据え、業務にフィットしたAI導入を伴走型でご提案。静岡県全域と隣接エリアで対面対応可能。「やりたいをできるに、できるをできたに」をミッションに、貴社の長期パートナーとして責任を持ってご支援します。

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