発注先は下請けに丸投げしていないか──静岡のシステム会社が教える7つの質問

相見積もりで並んだ3社のうち、1社だけ金額が明らかに低い。理由を聞いても「企業努力です」としか返ってこない。その見積書を前に、引っかかったまま決裁を進めようとしていないでしょうか。システム会社が下請けに出すこと自体は、普通の商慣習です。危ないのは、誰が手を動かし誰が責任を持つのかが分からないまま契約することです。この記事では、安い見積もりの裏で起きていることと、商談で実態を確かめる7つの質問、見積書から構造を推測する見方をまとめます。静岡のシステム会社として自社で開発している立場から、正直に書きます。

なぜ見積もりが安い会社ほど下請けに回しやすいのか

価格で勝負する会社ほど、自社の社員だけでは採算が合わず、仕事の一部または全部を外に出しやすくなります。外注そのものは合理的な判断です。ただし、商流に会社が1社増えるたびに取り分が引かれるため、実際に作る人に届く金額は確実に減っていきます。

受託開発の原価は、ほとんどが人件費です。社員のエンジニアには、仕事が少ない月も給与が発生します。だから各社は、年間を通して自社で抱えられる人数を控えめに設定し、ピークの分を外部に頼ります。公正取引委員会が2022年6月に公表した「ソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査報告書」でも、大手事業者への聞き取りが紹介されています。人手が必要なのは繁忙期のピークだけで、閑散期も雇用し続けるのは難しいという声です。新しい技術が次々に出てくるため、すべての領域の技術者を自社で抱えるのは難しい、という意見も同じ報告書に載っています。

ここまでは、どの会社にも当てはまる事情です。分かれ目はその次にあります。自社の設計者が中心に立ったうえで、足りない工程だけを外に出すのか。それとも、受注した金額から自社の取り分を抜いて、残りをまるごと別の会社に渡すのか。後者を選ぶと、営業と事務の人件費だけで案件が回るので、見積もりは下げやすくなります。

同じ報告書には、下請け側から見た金額の変化も報告されています。元請けとの直接取引だと思っていたら、後から子会社や関連会社を経由する商流になっていた事例です。当初提示した見積額を100とすると、最終的な契約額は50まで下がったといいます。発注した側から見れば「安く買えた」ように見えます。しかし実際に作業する会社の手元に残る金額は、貴社が払った額の半分かもしれません。

安い見積もりがすべて危ないわけではありません。小規模な会社は営業コストも管理費も抑えられているため、素直に安いことがあります。判断の分かれ目は金額ではなく、安さの理由を具体的に説明できるかどうかです。「自社で作るので中間マージンがありません」「過去の類似案件の部品を流用できます」のように理由が具体的なら、安さには根拠があります。理由が出てこない安さだけが、警戒に値します。

システム会社が下請けに出すこと自体は悪いことなのか

悪いことではありません。専門領域を外部に頼むのは、むしろ品質を上げるための普通の判断です。問題になるのは外注そのものではなく、設計も判断も含めて全部を渡してしまう「丸投げ」の状態です。

当社も、案件によっては外部の専門家と組みます。たとえばサーバーの設計や、デザインの作り込み、特定の機器との接続といった領域です。社内に無い知見を無理に自前で補うより、専門の技術者に入ってもらったほうが、結果として早く確実になります。開発の会社がすべてを自社だけで完結させていると言い切るほうが、むしろ不自然です。

では、何が丸投げなのでしょうか。先ほどの公正取引委員会の報告書は、実務を行わないのに商流に形式的に関与して利益を得る事業者を「中抜き」と定義し、その実態を調べています。与信を引き受けるなど、業務以外の面で実質的な役割を果たしている場合は除く、とも書かれています。この線引きは、発注する側にもそのまま使えます。名前を連ねている会社が、それぞれ何の役割を果たしているか説明できるなら、問題はありません。

健全な外注には、だいたい次の3つが揃っています。相見積もりのときは、この3点が満たされているかを見てください。

  • 要件定義と設計を、契約相手の会社が自社で担当している
  • 打ち合わせの窓口が一本で、その人が中身の判断までできる
  • 誰にどの範囲を再委託しているかを、聞けば答えられる

逆に、契約した会社の担当者が打ち合わせで一度も技術的な話に入らず、持ち帰って翌週に回答するだけ、という状態が続くなら、実態は伝達係かもしれません。公正取引委員会の報告書にも、すぐ上の会社の担当者が一度も打ち合わせに同席しなかった、という下請け側の声が記録されています。これは立場を入れ替えれば、発注者の側からも見える現象です。

多重下請けになると、発注した側は何が困るのか

困ることは3つです。仕様が伝わる途中でずれること、トラブルのときに誰が直すのかが決まらないこと、そして完成後の改修が遅く高くなることです。いずれも、金額の安さでは取り返せません。

まず数字を見ておきます。先ほどの実態調査では、実務をしない事業者が商流にいるかという問いに対し、回答した法人全体の25.9%が「感じたことがある」と答えています。立場別では、中間の下請けで29.2%、最終下請けで33.5%です。実際に手を動かす位置にいる会社ほど、不要な会社の存在を感じています。報告書には、6次下請けの技術者として参加した経験や、技術者の契約で最大5社が間に入る場合があるという声も載っています。

次に、現場で何が起きるかです。たとえば受注管理の画面に「出荷保留」という区分を1つ足したい、と貴社の担当者が言ったとします。窓口の営業担当がメモを取り、元請けの管理者に伝え、そこから実際に作る会社に渡ります。途中の誰かが「保留」を「キャンセル」と理解すると、出てくる画面は別物になります。確認のための往復も同じ経路を通るので、1往復に1週間かかります。同じ報告書には、4次下請けとして参加した案件で、エンドユーザーへの質問が途中の会社で止まっていたという声が載っています。止まっているあいだ、発注した側は「まだ返事が来ない」としか分かりません。

3つ目が、公開した後に効いてきます。システムは作って終わりではなく、業務が変われば直し続けるものです。商流が長いと、小さな修正でも間に入る全社に発注と検収が発生します。半日で終わる作業が、見積もりでは数日分の金額になります。やがて社内で「あの修正は高いから我慢しよう」という判断が増え、使いにくいまま放置されます。最初の見積もりで浮いた金額は、この段階で静かに消えていきます。

制度面にも触れておきます。2026年1月1日に下請代金支払遅延等防止法が改正され、名称が中小受託取引適正化法、通称は取適法に変わりました。公正取引委員会の説明資料によれば、協議を適切に行わない代金額の決定の禁止、手形払いなどの禁止、従業員数による適用基準の追加といった見直しが入っています。ただし、この法律が守るのは委託を受ける側です。エンドユーザーとして発注する貴社を直接守る仕組みではありません。だから発注側は、契約する前に自分で確かめる必要があります。

商談の場でどう聞けば実態が分かるのか

一番効くのは「この開発で実際に手を動かすのはどなたですか」という1問です。答えの中身よりも、答え方に差が出ます。自社で作っている会社は、役割と人数をその場で具体的に話せます。

ただし1問だけでは断定できません。相見積もりの場で順に聞ける形に整理すると、次の7つになります。全部を厳しく問い詰める必要はありません。会話の流れで3つか4つ聞くだけでも、だいぶ見えてきます。

# 聞くこと 何を確かめているか
1 この開発で実際にコードを書くのは、どの会社の方ですか 実装の主体が社内か社外か
2 その方々は社員の方ですか、協力会社の方ですか 外注の有無と、その規模
3 要件定義と設計は、どなたが担当されますか 判断の中心が契約相手にあるか
4 打ち合わせに、実際に作る担当の方は同席できますか 伝言の経路が何段あるか
5 再委託する場合、どの範囲を誰に出すか教えていただけますか 商流を開示できる体制か
6 不具合が出たとき、最初に受けるのはどなたで、直すのはどなたですか 責任の所在が一本化されているか
7 担当の方が交代した場合、引き継ぎはどう進みますか 特定の個人に依存していないか

質問する際に前置きを1つ添えると、場の空気が変わります。「疑っているのではなく、トラブルのときに誰に連絡すればいいかを先に知っておきたい」と言えば、まともな会社なら歓迎します。実際、体制を聞かれて嫌がる開発会社はほとんどいません。説明しづらい事情があるときだけ、話が抽象的になります。

反応の読み方にも、一言添えておきます。その場で即答できないこと自体は問題ではありません。協力会社の人員はスケジュールで変わるので、持ち帰るのが誠実な場合もあります。見るべきは、持ち帰った後に文書で返ってくるかどうかです。数日のうちに体制図や担当者の役割が書かれた資料が届けば、管理できている証拠になります。口頭で「大丈夫です」と繰り返されるだけなら、社内でも整理されていない可能性があります。

もう1つ、質問の途中で専門用語が出てきたときは、その場で聞き返してください。分からない言葉を分かったことにして進めると、認識のずれがそのまま仕様になります。打ち合わせで出やすい言葉と聞き返し方は、打ち合わせで出るIT用語の読み解き方にまとめてあります。静岡のAI会社として日々お客様と話していて、ここでつまずく場面が本当に多いからです。

見積書のどこを見れば下請け構造が推測できるのか

見積書だけで断定はできませんが、推測の材料にはなります。見るのは、工程の粒度、役割ごとの単価の整合性、前提条件と除外事項、そして保守の扱いの4つです。

  • 工程の粒度:「システム開発一式」で1行だけの見積もりは、中身を自社で積み上げていない可能性があります。要件定義、設計、実装、テスト、移行といった工程ごとに金額が分かれていれば、少なくとも作業を分解して考えています
  • 役割ごとの単価:管理者より実装担当の単価が高い、あるいは全員が同じ単価で並んでいる見積もりは、他社から提示された金額をそのまま転記しているおそれがあります
  • 前提条件と除外事項:「貴社で用意いただくもの」「この金額に含まれないもの」が書かれているかを見ます。書ける会社は、作業範囲を自分で把握しています
  • 保守と改修:公開後の窓口、対応時間、改修の単価が書かれているかを見ます。ここが空欄のまま契約すると、修正のたびに毎回ゼロから見積もることになります

注意したいのは、見積書が粗いこと自体は必ずしも手抜きではない点です。小さな会社は書式が整っていないこともあります。だから見積書は、そのまま優劣の判定に使わず、質問を作るための材料として使うのが実務的です。一式と書かれていたら「この中の内訳を教えてください」と聞けばよく、そこで何が返ってくるかのほうが情報量は多くなります。項目ごとの読み方は見積書の項目別チェックと比較手順で詳しく整理しています。

下請けを使っていても安心して任せられる会社はどこが違うのか

違いは、体制を説明できるかどうかの一点です。再委託先を含めた役割分担を図や文書で示せて、不具合のときの窓口と責任が一本化されていれば、商流が1段あること自体は問題になりません。

任せて大丈夫な会社には、次のような共通点があります。

  • 誰がどの工程を担当するかを、会社名と役割のレベルで説明できる
  • 打ち合わせに、実際に作る担当者が必要な場面で同席する
  • 再委託の範囲が契約書に書かれていて、変更するときは事前に知らせる取り決めがある
  • 不具合の一次受付と、修正の責任が同じ会社にある
  • 仕様の決定事項が、議事録や課題一覧として発注側にも共有される

逆に、気をつけたい兆候もはっきりしています。体制を聞くと話題が実績や価格に逸れる、打ち合わせの参加者が毎回変わる、質問の回答が常に「確認して折り返します」で折り返しに1週間かかる、という3点です。これらが揃っているなら、契約を急がず、もう一度体制の説明を求めたほうがよいでしょう。

すでに発注して動き出している場合も、打つ手はあります。進行中の案件で同じ違和感があるなら、体制の確認を改めて申し入れるのが先です。それでも改善しないときの考え方は、開発会社の乗り換えとセカンドオピニオンの判断基準にまとめています。慌てて切り替えると、仕様を知る人がいなくなって余計に苦しくなるため、順番が大切です。

地場で自社開発する会社に頼む利点と、正直な弱点

利点は、往復の速さと責任の明確さです。弱点は、技術の幅と、大規模な案件を同時に動かす力では大手に及ばない場合があることです。どちらも事実なので、両方を知ったうえで選んでいただくのが公平だと考えています。

まず利点です。設計する人と作る人が同じ建物にいると、仕様の確認が会話1回で終わります。先ほどの「出荷保留を足したい」であれば、打ち合わせのその場で画面を開き、影響範囲を見ながら返事ができます。現地に行ける距離であることも効きます。実際の作業を見ないと分からない業務は、静岡県内にいくらでもあります。倉庫の動線、工場の工程、店舗の繁忙時間。その場で見れば5分で分かることを、画面越しの説明で埋めるのは難しいものです。静岡のシステム会社に声をかける価値は、この距離感にあります。

弱点も書きます。地方の開発会社は人数が限られます。総務省統計局の国勢調査を基にした集計では、IT関連職業の人材の約6割が首都圏に集中しています。つまり静岡で選べる会社の数も、1社あたりの技術者の数も、東京と同じではありません。全国に拠点を持つ大規模なシステムや、特殊な業務パッケージの導入、24時間体制の運用監視といった要件なら、相応の規模を持つ会社のほうが適しています。静岡のAI会社に相談したほうがよい案件と、そうでない案件があるのは当然のことです。

そのうえで、当社が最初にお伝えしているのは「作らないほうがよい場合もあります」という話です。既製のサービスで足りるなら、わざわざ開発する必要はありません。ノーコードやローコードの道具で、貴社の担当者が自分で作って自分で直せる形にしたほうが、結果的に長く使える場面もあります。開発を受注できる立場で言うと損に聞こえるかもしれませんが、無理に作ったシステムは使われずに止まります。止まってしまったシステムの費用は、誰にも取り戻せません。

発注先を1社に決めるのは、この判断を一緒に考えてくれるかどうかを見てからで遅くありません。静岡のシステム会社を比べるときも、提案の内容より先に、提案に至るまでの質問の中身を見てください。業務をきちんと聞かずに金額だけ出してくる相手は、作る段階でも同じ進め方をします。

よくある質問

Q. 下請けに出している会社は避けたほうがいいですか?
避ける必要はありません。専門領域の外注は品質を上げるための普通の手段です。見るべきは、誰がどの工程を担当し、不具合のときに誰が責任を持つのかを説明できるかどうかです。説明できる会社であれば、商流に1社入っていること自体は避ける理由になりません。

Q. 相見積もりで一番安い会社を選んでも大丈夫ですか?
金額だけで決めるのはお勧めできません。安さの理由を聞いて、具体的に答えられるかを確かめてください。自社開発で中間の取り分がない、過去の資産を流用できる、といった説明があれば根拠のある安さです。理由が出てこない場合は、保守や改修の金額まで含めて比べ直すとよいでしょう。

Q. 「自社開発です」と言われたら、そのまま信じていいですか?
その場で1段だけ掘ってみてください。開発を担当する人数、役割、打ち合わせへの同席可否を尋ねれば、答え方に差が出ます。繰り返しますが、持ち帰ること自体は問題ではありません。後日、文書で体制を示せるかどうかが分かれ目です。

Q. 下請け構造が原因のトラブルには、どんなものがありますか?
典型的な例は、仕様の伝達ミスと、不具合が出たときに窓口が定まらないことです。公正取引委員会の2022年の調査では、下位の請負として参加した案件で、発注者への質問が途中の会社で止まっていたという報告が紹介されています。発注した側からは、返事が遅い理由が見えません。

Q. 契約書に「再委託の禁止」と書けば防げますか?
条文を入れること自体は有効ですが、それだけでは実態まで把握できません。全面的に禁止すると、専門領域を外部に頼めなくなり、かえって品質が下がる場合もあります。現実的なのは、再委託の範囲を事前に申告してもらい、変更時に知らせる取り決めにする形です。

Q. 小さな会社だと、体制を聞いても答えてもらえないのでは?
むしろ小規模な会社のほうが、誰が担当するかを具体的に答えやすい傾向があります。担当者の人数が少なく、社内の割り振りが見えているからです。質問は失礼になりません。答えづらそうな様子が続いたときだけ、理由を考えてみてください。

まとめ

要点は3つです。第一に、見積もりの安さ自体は問題ではなく、安さの理由を説明できるかどうかが分かれ目になります。第二に、下請けを使うこと自体も問題ではなく、丸投げして責任の所在が消えている状態だけが危険です。第三に、その実態は契約書を読む前に、商談の場での質問でかなり分かります。

明日できることを1つだけ挙げます。いま相見積もりをとっている3社に、メールで同じ1問を送ってみてください。「この開発で実際に手を動かすのは、どなたになりますか」。返信の速さ、具体性、そして体制を書いた資料が付いてくるかどうかで、3社の違いが見えてきます。社内の稟議を進める前に、この1往復をはさむだけで、後からの手戻りはずいぶん減ります。

発注の前に何を確かめるべきかだけでも、一度話してみませんか。静岡のAI会社として、また自社で開発する静岡のシステム会社として、当社は「作らないほうがよい」という結論も含めてお伝えしています。他社から出ている見積もりを前に、どこを聞けばよいかを整理するだけのご相談でも構いません。初回のご相談は無料です。株式会社Milestoneのお問い合わせからご連絡ください。

出典

株式会社Milestone(マイルストーン)
代表取締役 大石 湧斗(おおいし ゆうと)
所在地:静岡県沼津市
中小企業向けAIシステム開発・導入支援。「AIを使う」のではなく「AIを制御する」を経営の核に据え、業務にフィットしたAI導入を伴走型でご提案。静岡県全域と隣接エリアで対面対応可能。「やりたいをできるに、できるをできたに」をミッションに、貴社の長期パートナーとして責任を持ってご支援します。

関連記事