AI推進の担当者は誰にするか──中小企業のAI推進役の選び方と仕事を静岡のAI会社が解説【2026年版】

「AIを進めたいが、社内で誰に任せればいいのか分からない」。IT担当のいない中小企業で、AI推進の担当者を決める場面は、多くの経営者が最初につまずくところです。詳しそうな若手に頼んだものの、通常業務に追われて止まってしまった、という話もよく耳にします。この記事では、AI推進の担当者に向く人の条件、任せる仕事と任せない仕事、割くべき時間の決め方を、静岡のAI会社として現場で見てきた立場から説明します。最後に、その人が最初の90日でやることの手順も載せます。

中小企業でAI推進の担当者が決まらないのはなぜか

中小企業で推進役が決まらないのは、AIに詳しい人がいないからではなく、「誰の仕事か」を会社として決めていないからです。多くの会社では、AIは使いたい人が個人で使うもの、という状態のまま止まっています。

公的な調査にも、その様子が表れています。中小企業基盤整備機構の調査(2025年11〜12月実施)では、AI・ITの導入を推進する担当人材について聞いています。「特定の担当者はおらず、経営者・現場従業員が個別に推進している」が85.9%で、専任の担当者がいる会社は3.0%にとどまりました。専任ではないが推進役がいる会社も11.1%です。

同じ調査で、AIの導入をはばむ理由も聞いています。上位は「導入にあたっての高コスト」の46.9%、「社内のAIノウハウ不足」の42.0%、「社内のAI人材不足」の38.8%でした。ノウハウと人材の不足が、費用と並ぶ大きな壁になっています。

商工中金の調査(2026年1月調査)でも、生成AIについて「会社での導入はなく、使用は個人の判断に任せている」という答えが64.9%で最も多くなりました。つまり、半数を超える中小企業で、AIは「誰かが気づいたら使うもの」のままです。

「詳しい人」に任せるとうまくいかない理由

担当者を決めるとき、多くの会社は「社内でいちばんAIに詳しい人」を選びます。ところが、この選び方は長続きしないことが多いのが実情です。

詳しい人は、自分で使いこなすことには長けています。しかし、AI推進の担当者に求められるのは、他の社員が使えるようにすることです。自分の作業を速くする力と、社内の作業を変えていく力は別物です。

もう1つの理由は、時間です。詳しい人ほど、すでに社内で頼られていることが多く、通常の仕事が詰まっています。そこにAIの仕事を足すと、最初に削られるのはAIの仕事になります。

AI推進の担当者にはどんな人が向いているのか

AI推進の担当者に向いているのは、AIの知識がある人よりも、自社の業務をよく知り、社内で相談を受けやすい人です。AIの使い方は後から学べますが、業務の流れと社内の人間関係は短い期間では身に付きません。

具体的には、次の4つの条件を見ると選びやすくなります。

  1. 自社の業務の流れを、部署をまたいで説明できる
  2. 他の社員から「ちょっと聞いていい?」と声をかけられやすい
  3. 新しい道具を試すことを面倒がらない
  4. うまくいかなかったことを、正直に報告できる

4つ目は見落とされがちです。AIの活用は、試してはやめ、また試すことのくり返しです。「うまくいきませんでした」と言いにくい人が担当になると、使われていない仕組みが「順調です」と報告され続けます。

候補ごとの向き不向き

中小企業で実際に候補になりやすい人を、向いている点と気をつける点で並べました。どれが正解というより、自社の状況に合う人を選ぶための目安です。

候補 向いている点 気をつける点
経営者自身 判断が速く、社内に方針が伝わりやすい 本業が忙しく、試す時間が取れなくなりやすい
総務・事務の中堅社員 社内の書類や手続きの流れを広く知っている 現場の作業には詳しくないことがある
現場のリーダー 現場の困りごとを直接知っている 自分の部署の話に偏りやすい
ITに強い若手 新しい道具をすぐに試せる 社内での発言力が弱く、他部署を動かしにくい
外部の支援会社 進め方の型と、他社での経験を持っている 社内の事情は、社員が伝えないと分からない

表のとおり、1人で全部を満たす人はまずいません。そのため、AI推進は「担当者1人」ではなく、「担当者と経営者の組」で考えるほうがうまく回ります。方針と判断を社長が受け持ち、試す・集める・伝えるを窓口役が受け持つ形です。

従業員10人前後の会社なら、経営者が兼ねてもよい

従業員が10人前後の会社では、無理に担当者を新しく立てる必要はありません。経営者が自分で担当を兼ね、事務を見ている社員に手伝ってもらう形でも十分に回ります。

人数の少ない会社で担当者を指名すると、その人1人に負担が寄りやすくなります。まずは経営者が自分で使ってみて、社内で試す作業を1つ決めるところから始めてください。担当者を立てるのは、試す作業が2つ、3つと増えてきてからでも遅くありません。

AI推進の担当者に任せる仕事と、任せない仕事は何か

任せるのは、社内の困りごとを集め、小さく試し、結果を伝える仕事です。反対に、予算を決める、使ってよい範囲を最終的に決める、問題が起きたときの責任を負う、といった判断は経営者が持ちます。

この線引きがあいまいなまま担当者を決めると、担当者は「決めていいのか分からない」ことを抱えて動けなくなります。最初に、何を任せて何を任せないかを紙に書いて渡しておくと、本人は迷わずに動けます。

区分 中身 受け持つ人
集める 社内の「この作業が面倒」という声を集めて並べる 担当者
試す 選んだ作業でAIを小さく使ってみる 担当者と現場
記録する 試す前と後で、かかった時間や手間を記録する 担当者
伝える 結果と、うまくいかなかった点を社内に共有する 担当者
決める 予算、使ってよい範囲、続けるかやめるか 経営者
責任を持つ 情報の扱いの決まり、問題が起きたときの対応 経営者

担当者が抱え込みやすい仕事

担当者が特に抱え込みやすいのが、社員一人ひとりからの「使い方を教えて」という相談です。最初は喜んで受けていても、相談が増えると通常の仕事が回らなくなります。

これを防ぐには、よく聞かれる質問と答えを1か所にまとめておくことです。社内の共有フォルダに1枚の文書を置き、聞かれるたびに書き足していきます。同じ質問に二度答えずに済むだけで、担当者の負担はずいぶん軽くなります。

情報の扱いの決まりは、経営者が決める

社員が個人の判断で生成AIを使っていると、お客様の情報や社内の数字を入力してしまうおそれがあります。中小企業基盤整備機構の調査でも、AI・ITの導入にあたってセキュリティや情報漏洩への懸念が「強い懸念がある」「多少懸念がある」の合計で75.2%に上りました。

どこまでの情報を入力してよいかの決まりは、担当者に案を作ってもらってもかまいません。ただし、最後に決めて社内に示すのは経営者の役目です。担当者の名前で出した決まりは、他の部署から軽く扱われがちだからです。

AI推進の担当者には、週にどれくらいの時間を割けばよいか

AI推進の担当者の時間は、「空いた時間でやって」ではなく、週のどこに何時間使うかを先に決めて渡すのが基本です。時間が決まっていない仕事は、急ぎの仕事に押し出されて後回しになりがちです。

中小企業基盤整備機構の調査では、AIを導入した後の運用の課題として「ランニングコストが高い」が44.0%で最も多くなりました。次いで「運用担当者の負荷が重い」が29.1%、「従業員による活用が進まない」が28.9%でした。負担が重すぎることと、社内で使われないことは、導入後の代表的なつまずきです。

時間の目安は、作業の段階で変わる

担当者に必要な時間は、AIを試す段階と、使い方が固まった後の段階とで大きく変わります。最初の数か月は多めに、仕組みが回り始めたら少なめに、という配分で考えます。

当社が支援している静岡県東部の老舗呉服店では、AIチャットボットをホームページ・SNS・チラシのQRコードの共通の窓口として使っています。運用の中身は、週30分程度のログの確認と情報の追加です。よく聞かれた質問と、答えられなかった質問を見て、足りない情報を書き足しています。

仕組みが回り始めた後は、こうした決まった時間の見直しで続けられる、という例です。ただし、ここに至るまでの準備の段階では、もっと多くの時間がかかります。最初の数か月は、担当者の通常の仕事を一部ほかの人に回すことも考えてください。

時間を決めるときの3つの約束

時間を渡すときは、次の3つを本人と経営者の間で約束しておくと、途中で止まりにくくなります。

  • 毎週、AIの仕事に使う曜日と時間帯を決め、予定表に入れる
  • その時間には、急ぎでない限り通常の仕事を頼まない
  • 月に1回、経営者と15分ほど、進み具合を話す場を持つ

3つ目の場では、成果よりも「何を試して、何が分かったか」を聞いてください。経営者がそれを聞く場があるだけで、担当者は「この仕事は会社に見てもらえている」と感じられます。

経営者は、AI推進の担当者に何をすればよいか

経営者がすべきことは、担当者を社内に向けて正式に任命し、方針と判断を引き受けることです。AI推進は、本人に丸投げした時点で個人の取り組みに戻ってしまいます。

会社として取り組むかどうかで、結果に差が出ることを示す調査もあります。商工中金の調査(2026年1月調査)では、生成AIを積極的に使っている会社に、経営への効果を聞いています。経営へのプラスの効果を感じている割合は、会社として導入した会社で36.6%、個人の利用を勧めるにとどめた会社で26.0%でした。10ポイント以上の差があります。

任命を社内に宣言する

担当者を決めたら、朝礼や社内の連絡で「AIの推進は◯◯さんにお願いした」と経営者の口から伝えてください。これだけで、他の部署に声をかけたときの受け止められ方が変わります。

宣言がないまま担当者が動くと、他の社員からは「個人的に何かやっている人」に見えてしまいます。とくに年上の社員や他部署のリーダーに協力を頼む場面で、本人は動きにくくなります。

評価の中に入れる

担当者がAIの仕事に使った時間を、評価の対象として扱うことも大切です。AIの仕事をしても評価が変わらないなら、本人は通常の仕事を優先するようになります。

評価といっても、大げさな仕組みは要りません。半年に1回の面談で、AIの取り組みについても話を聞く。それだけで、担当者にとっては「会社に必要とされている仕事」になります。

任命した後によくある3つのつまずき

任命しても、数か月たつと動きが止まってしまう会社があります。止まり方には、よく似た型があります。

1つ目は、「何か考えておいて」とだけ頼むパターンです。目的も対象の作業も決まっていないため、担当になった人は情報を集めるだけで手が止まります。頼むときは「この部署のこの作業の手間を減らしたい」まで具体的に伝えてください。

2つ目は、報告の場がないパターンです。試したことを話す相手がいないと、うまくいかなかった試みが社内に共有されないまま終わります。同じ失敗を別の社員がくり返すことにもなります。月に1回の短い場を、経営者の予定に先に入れておきましょう。

3つ目は、最初の試みで成果を求めすぎるパターンです。1回目の試みで目に見える効果が出ないと、「AIはうちには合わない」という空気が広がります。最初の試みは、成果を出すためというより、自社で進め方の型をつかむための練習と考えてください。

どれも、経営者の頼み方と関わり方で防げるものです。任命した人の力不足だと決めつける前に、頼み方を見直すほうが早く立て直せます。

予算を通すための社内の資料づくりで迷っている場合は、AI導入の稟議書に何を書くかを解説した記事も参考にしてください。担当者と経営者のどちらが何を書くかを決めるときにも使えます。

担当者を置かずに、外部に頼る選択肢はあるか

担当者を置く余裕がない会社では、外部の支援会社に進め方を頼り、社内では窓口役だけを決めるという選択肢もあります。ただし、外部に頼っても、社内の誰かが業務の事情を伝える役は残ります。

外部に頼むときに気をつけたいのは、すべてを任せてしまうことです。支援する側は、貴社の業務の細かな事情や、社員の受け止め方までは分かりません。社内に窓口役がいないと、作ったものが現場に合わないまま、使われずに終わることがあります。

外部に頼む前に、まず無料でできること

外部に頼む前に、社内でできることもあります。いきなり支援会社に相談するより、地域の公的な相談窓口で話を聞いてみるほうが合う会社もあるでしょう。

静岡県内で、AIについて誰に何を相談できるかは、静岡のAI相談先マップの記事にまとめています。商工会議所や支援機関に相談するのか、AI会社に相談するのかを決める材料にしてください。

外部と組むときの、社内の役割

外部と組む場合でも、社内の窓口役には次の3つをお願いすることになります。

  • 現場の作業の流れや困りごとを、外部の担当者に説明する
  • 試しに作ったものを現場で使ってもらい、感想を集める
  • 社内の決まりや、使ってよい情報の範囲を外部に伝える

現場の声がどれだけ大事かは、私たちが関わった例からも分かります。静岡県駿東郡清水町の福祉事業所、NPO法人ティンクル「多機能型事業所あぐれす」では、AIで日報をつくる仕組みを開発しました。現場には情報機器に不慣れな職員が多かったため、当社が現場スタッフへのヒアリングを重ね、画面のメニューを絞った作りにしています。導入後は、スタッフから「思っていたより全然簡単で使いやすい」という声が出ました。納品後も、現場の声を拾って改善を続けています。

開発を請け負う静岡のシステム会社の立場から見ても、社内に窓口役がいる会社のほうが、作るものの範囲を早く決められます。反対に、その役がいないまま相談を受けると、聞き取りのたびに話す人が変わり、要望がまとまらないことがあります。外部に頼むかどうかにかかわらず、社内で話をまとめる人を1人決めておくことは、費用の面でも無駄を減らす近道です。

外部の支援が実際に何をしてくれるのかは、静岡の「AI導入支援」の中身を診断・設計・定着の3段階で解説した記事で説明しています。

AI推進の担当者は、最初の90日で何をすればよいか

AI推進の担当者が最初の90日でやることは、困りごとを集め、作業を1つに絞り、小さく試して結果を報告するところまでです。最初から全社で使える仕組みを目指すと、途中で止まります。

次の5段階で進めると、90日で一回りできます。

  1. 最初の2週間:各部署から「面倒な作業」を1人3つずつ書き出してもらう
  2. 3〜4週目:書き出した作業から、毎週くり返していて間違いを社内で直せる作業を1つ選ぶ
  3. 5〜6週目:選んだ作業に今どれだけ時間がかかっているかを記録する
  4. 7〜10週目:生成AIなどを使って、その作業を小さく試す
  5. 11〜13週目:同じ方法でもう一度記録し、経営者に「続けるか、やめるか」の材料を報告する

要点は、3と5で同じ記録を取ることです。前と後を同じ方法で比べれば、効果があったかどうかを感覚ではなく時間で説明できます。「やめる」という結論になっても、それは失敗ではありません。合わない作業が1つ分かったという、次に生かせる結果です。

1つ目の作業は、社内向けのものを選ぶ

最初に試す作業は、お客様に直接届かない社内向けのものを選んでください。会議の記録の下書き、社内の連絡文、日報の文づくりなどが代表です。

お客様に届く作業でつまずくと、社内で「AIは危ない」という印象が広がり、次の一歩が重くなります。社内の作業でうまくいった実感を持ってから、外に向けた作業に広げるほうが安全です。

よくある質問

Q. AI推進の担当者は、専任にしたほうがいいですか?
A. 中小企業では、最初から専任にする必要はありません。兼任のまま、AIの仕事に使う時間を週の予定に組み込むほうが現実的です。試す作業が増えて、兼任では回らなくなった時点で専任を考えてください。

Q. AIの知識がまったくない人でも、担当者になれますか?
A. なれます。生成AIの使い方は、実際に触りながら数週間で覚えられる範囲です。それより、自社の業務を知っていて、社内で相談を受けやすいことのほうが大切です。

Q. 担当者に資格や研修は必要ですか?
A. 必須ではありません。まずは担当者自身が、日々の自分の作業でAIを使ってみることが一番の練習になります。社外の研修は、試す作業が決まり、知りたいことがはっきりしてから選ぶと無駄がありません。

Q. 担当者が辞めたり異動したりしたら、どうすればいいですか?
A. 試したことと分かったことを、本人の頭の中ではなく文書に残しておくことが備えになります。よく聞かれる質問と答え、使ってよい情報の決まり、試した作業の記録の3つを、共有の場所に置いておきましょう。後任は、それを読めば続きから始められます。

Q. 社員がAIを使ってくれないときは、どうすればいいですか?
A. 使ってほしい作業を1つに絞り、その作業をしている人と一緒に試すのが近道です。全員に一斉に勧めても、自分の仕事にどう使うかが分からないままになりがちです。1人が「楽になった」と感じれば、その声が周りに広がります。

Q. AI推進の担当者と、情報システムの担当者は同じ人でいいですか?
A. 兼ねても問題ありませんが、役割は分けて考えてください。情報システムの担当者は、機器や仕組みを安全に動かすことが主な役目です。AI推進の担当者は、社員の作業をどう変えるかを考える役目で、見る先が少し違います。

まとめ

AI推進の役を誰に任せるか決めるときに押さえたい点は、次の3つです。

  1. 担当者には、AIに詳しい人より、業務を知っていて社内で相談を受けやすい人を選ぶ
  2. 試す・集める・伝えるを受け持ち、予算や決まりの判断は経営者が持つ
  3. 週に使う時間を先に決め、任命を社内に宣言し、評価の中に入れる

明日からできることは、AI推進の担当者に任せる仕事と任せない仕事を、紙1枚に書き出してみることです。書き出すと、誰がふさわしいか、経営者が何を引き受けるべきかが見えてきます。

書き出してみて「誰に任せればいいか決めきれない」と感じたら、静岡のAI会社である私たちにご相談ください。何から手を付けるべきかだけでも、一度話しませんか。静岡のシステム会社として、担当者を置く前に社内でできることがあれば、まずそれをお伝えします。外部への相談が初めての方も歓迎です。地元で相談できる静岡のシステム会社を探している方は、Milestoneのお問い合わせからご連絡ください。

株式会社Milestone(マイルストーン)
代表取締役 大石 湧斗(おおいし ゆうと)
所在地:静岡県沼津市
中小企業向けAIシステム開発・導入支援。「AIを使う」のではなく「AIを制御する」を経営の核に据え、業務にフィットしたAI導入を伴走型でご提案。静岡県全域と隣接エリアで対面対応可能。「やりたいをできるに、できるをできたに」をミッションに、貴社の長期パートナーとして責任を持ってご支援します。

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